あの夏が飽和する - カンザキイオリ

[00:00.900]作曲：カンザキイオリ
[00:00.900]作词：カンザキイオリ
[00:11.810]「昨日人を殺したんた」
[00:14.510]君はそう言っていた。
[00:17.420]梅雨時ずぶ濡れのまんま、部屋の前で泣いていた。
[00:22.830]夏が始まったばかりというのに、
[00:25.580]君はひどく震えていた。
[00:28.010]そんな話で始まる、あの夏の日の記憶だ。
[00:36.260]
[00:51.920]「殺したのは隣の席の、いつも虐めてくるアイツ。
[00:57.119]もう嫌になって、肩を突き飛ばして、
[00:59.923]打ち所が悪かったんだ。
[01:02.759]もうここには居られないと思うし、どっか遠いとこで死んでくるよ」
[01:07.989]そんな君に僕は言った。
[01:10.451]「それじゃ僕も連れてって」
[01:13.531]財布を持って、ナイフを持って、
[01:16.061]携带ゲームもカバンに詰めて、
[01:18.730]いらないものは全部壊していこう。
[01:24.052]あの写真も、あの日記も
[01:26.629]今となっちゃもういらないさ。
[01:29.201]人殺しとダメ人間の
[01:33.041]君と僕の旅だ。
[01:39.961]そして僕らは逃げ出した。
[01:42.361]この狭い狭いこの世界から。
[01:45.443]家族もクラスの奴も何もかも
[01:48.132]全部捨てて君と二人で。
[01:50.730]遠い遠い誰もいない場所で二人で死のうよ。
[01:55.611]もうこの世界に価値などないよ。
[01:58.160]人殺しなんてそころ中
[02:00.299]湧いてるじゃんか。
[02:01.650]君は何も悪くないよ。
[02:04.260]君は何も悪くないよ。
[02:09.572]
[02:22.751]結局僕ら誰にも愛されたことなどなかったんだ。
[02:27.581]そんな嫌な共通点で
[02:30.221]僕らは簡単に信じあってきた。
[02:33.441]君の手を握った時、微かな震えも既になくなっていて
[02:38.822]誰にも縛られないで二人
[02:41.252]線路の上を歩いた。
[02:44.093]金を盗んで、二人で逃げて、
[02:46.843]どこにも行ける気がしたんだ。
[02:49.482]今更怖いものは
[02:52.593]僕らにはなかったんだ。
[02:54.653]額の汗も、落ちたメガネも
[02:57.422]「今となっちゃどうでもいいさ。
[02:59.842]あぶれ者の小さな 逃避行の旅だ」
[03:10.941]いつか夢見た優しくて、
[03:13.072]誰にも好かれる主人公なら、
[03:16.151]汚くなった僕たちも見捨てずに
[03:18.950]ちゃんと救ってくれるのかな？
[03:21.492]「そんな夢なら捨てたよ。
[03:23.822]だって現実を見ろよ。
[03:25.492]シアワセの四文字なんてなかった、
[03:29.001]今までに人生で思い知ったじゃないか。
[03:32.242]自分は何も悪くねえと
[03:34.843]誰もがきっと思ってる」
[03:39.861]
[03:53.502]あてもなく彷徨う蝉の群れに、
[03:56.153]水も無くなり揺れ出す視界に、
[03:58.742]迫り狂う鬼たちの怒号に、
[04:01.361]バカみたいにはしゃぎあいふと君けナイフを取った。
[04:05.510]「君が今までそばにいたなら
[04:07.872]ここまでこれたんだ/
[04:09.651]だからもういいよ。/
[04:11.242]もういいよ」/
[04:12.200]「死ぬのは私一人でいいよ」
[04:16.312]
[04:24.271]そして君は首を切った。
[04:26.512]まるで何かの映画のワンシーンだ。
[04:29.552]白昼夢を見ている気がした。
[04:32.293]気づけば僕は捕まって。
[04:34.781]君がどこにも見っからなくって。
[04:37.442]君だけがどこにもいなくって。
[04:40.233]そして時は過きていった。
[04:42.423]ただ暑い暑い日が過ぎてった。
[04:45.382]家族もクラスの奴らもいるのに
[04:48.312]なぜか君だけはどこにもいない。
[04:50.863]あの夏の日を思い出す。
[04:53.192]僕は今も今でも歌ってる。
[04:56.132]君をずっと探しているんだ。
[04:58.622]君に言いたいことがあるんだ。
[05:01.413]九月の終わりにくしゃみして
[05:04.002]六月の匂いを繰り返す。
[05:06.502]君の笑顔は
[05:07.891]君の無邪気さは
[05:09.322]頭の中を飽和している。
[05:12.242]誰も何も悪くないよ。
[05:14.831]君は何も悪くはないから
[05:17.581]もういいよ。
[05:18.502]投げ出してしまおう。
[05:20.173]そう言って欲しかったのだろう？ なあ？